おふくろ
宴席でのことです。お一人ずつごあいさつをしておりました。
「女将、実はおふくろが亡くなってさ95歳だよ。みんな大往生だって言ってくれたけど
いくつになっても母親だもの切ないよ、孫の前で泣いたことなんかないけど、涙が
止まらなかったよ。」
「霊柩車なんかたのむな!、って俺の車に布団敷いてさ、乗せてずっと兄弟の家をまわったよ。
母ちゃん(・・)の家だぞ、(・・)の家だぞわかるか?って。」
「俺のおふくろいなくなちゃったんだよ」
(えっ、ご自分の車で?すごい!!)驚きと感動で胸が振るえました。
私は慰める言葉もみつからずに、ただうつむいているだけでした。
誰かに話をしたかったのでしょうね。
私なんかで良かったのでしょうか?
その直後吹っ切れたような笑顔がまた切なかったですね。
私の父はもう亡くなっていますが、母が弟夫婦と暮らしています。
まだまだ元気でいますが、むしょうに母の笑顔に会いたい夜でした。
「全国のお母さん、どうぞ長生きしてくださいね。」